平尾の集合住宅(BRAMASOLEhirao)

平尾の集合住宅(BRAMASOLEhirao)
竣工:2017年
建築面積:214.80㎡(64.977坪)
延べ床面積:806.05㎡(243.83坪)
種別:共同住宅/店舗付(新築)
構造・鉄筋コンクリート造
施工:ナガタ建設株式会社
撮影:イクマサトシ(TechniStaff)

福岡市中心部からすぐ、幹線道路沿いに建つ賃貸住宅と商業テナントからなる5階建ての複合建築である。我々は、周辺の都市景観を形づくっているバルコニー景観に対するカウンターとして、規則的に並んだ大きな四角い窓が特徴的な、小さくてかわいい建築を設計した。集合住宅、とりわけ賃貸住宅においては、延べ面積やレンタブル比の最大化、施工坪単価の最小化、間取りの一般化等を行う事によって、借り手の母数を最大化することがセオリーとなってきた。そこから導かれる生活様式や建築様式は定型化し、その象徴として、都市にバルコニー景観が表出してきたと言えるだろう。しかしこの建築において我々が考えた事は、そういった通常の賃貸住宅のセオリーとは別のところにある。それは、個性的な生活様式あるいは建築様式を導くことによって、潜在する特定層のニーズに応えるというセオリーである。すでに供給過剰となり空室が社会問題となっている賃貸住宅市場において、他と差別化することこそが永く使われ続ける建築をつくるのだという関係者相互のコンセンサスによってこのプロジェクトが具現化された。単身者やカップル、SOHO利用などを想定した回遊できる住戸平面。インナーバルコニーを介してアプローチするつくりと、住戸内部へ引き込まれた土間。愛用の自転車を住戸まで持って上がれる大きなエレベーター。室内に明るさと雰囲気をもたらす3枚並びの大開口。インナーバルコニーから直接屋上へと続く螺旋階段(最上階)。可愛さをもたらす曲線の壁や小屋を思わせる棟屋のかたち。これらは現在、この建築の個性として存在しているが、同時に、いつか必ず来る改修の際にも愛すべき手がかりとなってくれるだろう。この建築が、映画「トスカーナの休日」に出てくる建物BRAMASOLEのようにいつも賑やかで、時代とともに手を加えられながら、この街で永く愛される事を願っている。

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